パーフェクトブルー 感想 後編 ※ネタバレ含む

前編からの続き……というわけで後編です

 

目次

#感想4 瞳の中のアメーバ

 

個人的に印象に残っている画がある。

ヌードのカメラマンが殺害され、自分の周りの人間が殺害されていることに恐れおののく未麻。

さらにクローゼットを見ると、血のついた服が入っている。もしかしたら自分が犯人なのか?という考えを導いてくる仕掛けのがいやらしい(笑

 

さらに注目したシーンがある。

マスコミが玄関に殺到し、完全に我を失い固まった未麻の画だ。

事件が頻発する恐怖と、自分が犯人かもしれないという疑念。ぐちゃぐちゃ心理状態に陥り、完全に固まった未麻の画がすごかった。

どことなく平面的で、彩色がやや褪せたようにも個人的には見える。

そして特徴的なのは目。

UnsplashGenton Damianが撮影した写真

その目はマメーバのようににじんでいる

混乱の果ての自失状態といった様子が一発で飲み込める画だと思われた。

このシーンの原画、ちょっとほしいと思ってしまった(笑

 

 

#感想5 チグハグ

内田守の声をそこで初めて耳にしたとき、その声が意外なほどの高音だったことに驚いた。
どことなく退廃的で野暮ったい見た目でありながら、子供じみたような高音の声だからけっこう似合わない気がしたからだ。

Image by DJDStuttgart from Pixabay

しかし、その違和感こそ不審者の演出には良いのかもしれない

外見は時間の波に洗われて相応に老いる。ただ精神の成熟はあまりない。

肉体は年をとる、しかし声だけは甲高く少年のような声。
なんとなく本人の未成熟を暗示しているようでもある、と個人的に感じた(合っているかは知らない)。

強烈な自意識とそれを支える頑固な妄想をもつ特性は悪人に唆された果てに、凶行に走る人間を表現する一つの形として参考になるかもしれない。

 

そういえば見終わってから、このチグハグ感というものを考えていると、黒幕だったルミのことも思い出す。

日常ではスーツを着てマネージャー業をしているが、一方、その太った巨体に似つかわしくないアイドル衣装をまとって、刃物を振り回して、町中でチェイスをする。

おかしい人特有のチグハグ感はルミにも内田守にもある。

不審者……そういうものを考える上で、このチグハグ感というのはけっこう重要ポイントになるのではないだろうか、と考えた

 

#感想6 青い空の下で

ラスト。

東京の夏の青空。場面が移り、ここは病院。

UnsplashRyo Yoshitakeが撮影した写真

病院の医師が「時折、ルミさんに戻ることもあるのですが……」と言うと、未麻は「でも、あの人のおかげで今の私があるんです」と返す。

さて、このシーンで飛び出した『あの人のおかげ』とは一体何を指しているのだろう。

 

普通に考えるなら「マネージャーとしてお世話になったから」と捉えるのが妥当。

しかし、さらに個人的な想像を膨らませると、全く違う側面が考えられると思う。

それは「羽化」である。

あの凄惨な一連の事件は、サナギから蝶へと生まれ変わるための、ある種の通過儀礼だったのではないか。

マネージャーのルミは、妄想を完全体へ移行させるために(自己の精神破壊を伴いながら)「アイドル:ミマ」になった。

他方、女優を目指す未麻にとっては、もう「アイドルのミマ」という殻は不要だった。

二人はそれぞれが羽化を果たすために、あのナイフバトルを通してお互いの精神の一部を切り取り、交換し合ったのではないだろうか。

もちろん、それらは未麻が無理やりルミに背負わせたものではないし、ルミも自らそれを背負いたがっていた。

ある意味では利害が一致した「Win-Winのハッピーエンド」と言えなくもない。ただ、その結末が鮮血の色で彩られているのだが……。

 

そして、この推測が正しいとするならば、ラストシーンでルームミラーに映った未麻の笑顔にもいろいろ見えてくる気がする。

率直に言って、あの笑顔にはどこか「魔的なもの」を感じてしまった。

なぜ、そんな感覚を覚えるのか。ナイフバトルを通じて不要な荷物をルミに渡しきり、無事に羽化を遂げた未麻。

あの瞬間の彼女の内に潜む「恐ろしい一面」が刹那的に露出したのではないか。

己にとって不要なものを他人に背負わせ、無慈悲に決別する――。あの笑顔には、そんな彼女のしたたかさや、いくらかの冷酷さが含まれていた気がしてならない。

現に未麻は目的を果たし、大女優へと登り詰めた。そんな彼女が最後に言い放つ。

「私 は 本 物 だ よ」と。

 

うーん……やっぱり怖い(苦笑)。

 

 

#感想7アイドルソングは十代の香り

あと、エンディングで流れる曲(『Background』)がすごく良かったです。

昔の王道アイドルソングやアニソンっぽさもあり、とても綺麗なメロディーだと思いました。

とくに、サビ前の独特な変化がある箇所がお気に入りです。

1番の♪揺れる思い全部〜『せ・い・ふ・く・の・な・か・に』隠して〜

2番の♪帰り道でいつも『は・な・し・て・く・れ・た』夢をまた

詳しい音楽理論はさっぱりですが、このパート、フックが効いていて耳に残ります。

爽やかなアイドル感全開の曲調は、物語序盤のキュートなアイドル活動(CHAM!)の雰囲気にぴったりだと感じていました。

 

ただ、映画を最後まで観終えた後に改めて聴くと……どうしてだろう、なんだかうっすらと寒気を覚えるのです。

妄想の世界でアイドルを続けているルミや、最後に不敵に笑って「本物の大女優」になった未麻の姿を知ってしまったからでしょうか。

 

 

#まとめ

最初にも書いた通り、名作として知られる本作をようやく視聴でき、非常に満足しています。

さすが名作と言われるだけあって、終始激しく惹きつけられました。

 

で、他人にお勧めかというと、間違いなくオススメできます。

ただ、エンタメ的な爽快感は薄く、どこか陰鬱な邦画っぽさもあるため、ポップコーンを片手に気楽に観るようなスタイルには向かないかもしれません。

また、劇中には疑似的なレ○プシーンや露出度の高い場面もあります。

アニメとはいえ非常にリアル寄りのキャラデザ、精密な描写力で描かれているため、こうした過激な表現が苦手な方には勧められません。気まずい空気になりかねないので、家族やカップルでの視聴も避けた方が無難でしょう(笑

しかし、丁寧に作り込まれた本作は画的にも美しく、演出の迫力に圧倒されることは間違いありません。

名作をじっくり味わいたい方や、作品のアートワークが好きな人には文句なしの一作です。

さらに、サスペンスが好きな方や、精神世界に入り組んで観客の心まで揺さぶり、疲弊させるようなサイコホラー作品が好きな方にも強くオススメできます。

 

実を言うと、私自身はこうした精神世界系の映画やアニメがあまり得意ではありません。

いやはっきり言って、人間心理のラビリンスに放り込まれて擬似体験させられるような展開が大の苦手なのです。

とにかく精神を揺さぶってくる作品はダメで……そうなると当然、監督の作品はことごとくストライクゾーンから外れるわけです、しかし、にもかかわらず、こちらの監督作品には強烈に惹きつけられてしまう。

本来は苦手なはずの作風なのに……です。

どうしてそんなチグハグなことがおきるのか、それはやはり、監督の手腕でしょう。

それほど、作品は才能にあふれ、優れているのだと思います。

オススメですね。

 

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